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「ふむ……君達は?」
「道に迷っているものです」
「そうなんです、よかったら、道を教えてもらえませんか?」
とたん寂しそうな顔をする、シルクハット。
「道に迷った……か。実は私もだ」
どうやら僕の二十分間の地獄は意味をなさなかったようだ。
「とはいっても、君達とは意味が違う」
「どういうことですか?」
彼女は、明らかに誰かからの返答を待っているであろうシルクハットの妙な物言いに、しっかりと答えてしまった。
これは、もしかしたら長い地獄が待っているかもしれない。
「そう……私は人生という名の道に迷ってしまったのだ!」
「それは大変だ。僕たちではとても解決できそうにないのが残念ですが、帰り道を教えてください」
先手必勝。僕はシルクハットの腰を折ることにした。
「ちょちょちょ、少しぐらい話を聞いてくれてもいいじゃないか!」
「いい人生相談屋さんを教えますよ」
「だから話を――」
「これが紙とペンです。細かく書いていただけると幸いです」
そのかわりに、と僕は人生相談屋さんの名刺を渡した。
「ちょ、ちょっと、ひろふみ くん、かわいそうでしょ? 話くらい聞いてあげても……」
「そうだぞ! きみ! 私が可哀そうではないか!」
「可哀そうです。涙がこみ上げてきます。帰り道を教えてください」
「まだ何も話してはおらんぞ!?」
……結局、僕は彼女に説得されて、このシルクハットの話を聞く羽目になってしまった。
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