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――どれぐらい長い時間が流れただろう。
嗚咽がおさまった頃、彼女がそっと口を開いた。
「シルクハットのおじさん……妖精になれたかな……?」
いつもなら、そんなことあるものかと言っているところだが、その時は「きっとなってて、そのうち会いに来るさ」と柄にもないことを言った。
「そうだよね、きっと今頃……自由に空を飛びまわってるから……まだ会いには来ないんだよね?」
「もちろん、きっと、いろんなところを飛び回ってる最中なんだよ。……全く、早く会いに来ればいいのにな」
「ふふ、まったくだよね……」
「…………」
「…………」
「ね、ひろふみくん?」
「ん? なに?」
「あのおじさん、最後に言ってたことば……」
「へ? ……ああ、道に迷うがどーとかの」
「あの言葉さ、ひろふみくんが嘘ついたときに言ってたことばだよね?」
「ああ、そういえばそうだね」
「なんか、不思議だね?」
「そうだね、確かに……不思議だ」
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