シルクハット

11/13
前へ
/211ページ
次へ
――どれぐらい長い時間が流れただろう。 嗚咽がおさまった頃、彼女がそっと口を開いた。   「シルクハットのおじさん……妖精になれたかな……?」   いつもなら、そんなことあるものかと言っているところだが、その時は「きっとなってて、そのうち会いに来るさ」と柄にもないことを言った。   「そうだよね、きっと今頃……自由に空を飛びまわってるから……まだ会いには来ないんだよね?」 「もちろん、きっと、いろんなところを飛び回ってる最中なんだよ。……全く、早く会いに来ればいいのにな」 「ふふ、まったくだよね……」 「…………」 「…………」   「ね、ひろふみくん?」 「ん? なに?」 「あのおじさん、最後に言ってたことば……」 「へ? ……ああ、道に迷うがどーとかの」 「あの言葉さ、ひろふみくんが嘘ついたときに言ってたことばだよね?」 「ああ、そういえばそうだね」 「なんか、不思議だね?」 「そうだね、確かに……不思議だ」
/211ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加