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タオルを渡してやると、顔を埋めるようにして水滴を拭う。
「送るよ。家、どこ?」
エンジンを掛けると、さっきまで聞いていたラジオ番組の続きが鳴りだした。
明るいDJの声が、何だか不釣り合いな雰囲気の中、妙に浮いていて苦笑する。
不意に、左腕に温かな体温を感じて、反射的に助手席を見やった。
潤んだ大きな瞳が、熱っぽい視線で絡み付くように見上げていた。
「ど……した?」
声が変に掠れてしまい、軽く咳払いする。
本当は、この時点で気付いていたのかもしれない。
女の求めているものを。
「帰りたくない……」
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