『女』

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すっかり、化粧が剥がれ落ちた上、濡れ鼠で髪もぐちゃぐちゃで……。   おまけに、いきなり抱いてくれとか言い出すし。   本当に、どうかしてる。   でも、口調が軽い分、ひどく儚くて、刹那的で……出会ったばかりでおかしな話だが、そこには確かな愛おしさを感じた。   「俺の部屋でいい?」   どうかしてるのは、僕の方かもしれない。   罪悪感も然り、それ以前に素性も知らない人間を家に上げていいものか…。 だけど僕は、女が頷いたのを確認するや否や、安アパートへと車を走らせていたのだった。
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