『雨』

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「……嫌なら、今なら逃げられるぞ?」   僕は、腰に回された細い腕をそっとほどいた。   「逃げないよ……。貴方は?嫌じゃない?」   上目遣いで、意図した猫撫で声は、全てを見透かしていた。   「嫌な訳…ないだろ」   額に落とした優しいキスでは物足りないとでもいうように、唇を尖らせた彼女は自分からキスをせがんだ。   乱れた髪に指を絡め、誘惑の海に溺れていく。    彼女の中に咲いた、鮮やかな欲望の花だけを僕は見ていた。
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