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―――雨音と女の押さえきれない声が、夜と男を支配する。
僕は彼女の身体に顔を埋めて言った。
「君の体からは、海の匂いがする……」
彼女は、僕の髪を梳きながら、気だるい声で囁いた。
「知ってる?雨が地上に堕ちる瞬間の重たい空気には、海の匂いが溶けているんだって。
でも、みんな忙しいからそんなことには気付かないの。
だから、知ってる人は少ないんだって。それって損してる気がしない?」
僕は、黙って頷いた。
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