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あたしはその場で立ち上がると、彼女に深く頭を下げた。
「今までありがとう」
「……」
ふと、堪えている声に気付きあたしが頭を上げると、今までの冷静な顔は無く、代わりに涙でぐしゃぐしゃになっていた。
「…ふっ、…うっ…」
「!っ」
彼女の姿を見て、あたしは直ぐに彼女に抱きついた。
「…わっ…た、し……あなたに……ずっと…っ!」
「いいの…!ありがとう、ありがと…ぅうっ……」
あたしと彼女は、強く抱き合いお互いに顔を埋めた。すると、彼女は少し誤魔化すようにあたしに問いた。
「っ…。あなた…の、その…信頼する人、は、どんな人なの?……」
あたしはその質問に、涙付きの笑顔で答えた。
「…っとね、少し、あたしに似てる人なの。…でも、優しいんだよ。あたしに名前も付けてくれたんだよ」
「そう…、なんて名前なの…?」
「…アリスっ!」
「…そう、アリス…。
アリス……、確かにその人はとても優しいのね…」
「そうなの…そうなのっ……!」
互いに頑張って笑顔で話そうとしていても、言葉と一緒に出てくる涙はどうしても止められなかった。
そうしてしばらく二人は、出会ってから約15年の中で初めての会話をした。
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