【第一話】

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 先ほど、交渉の際に見せた挑発的な振る舞いだけでなく、年相応の微笑ましさをも持ち合わせている神。  しかし、一度、殺人スイッチが入った途端、この微笑ましさは影を潜め、冷酷に殺人を楽しむ。  この愛嬌溢れる普段の神からは狂気を纏い、人外の獣のような姿は想像も出来ない。        ‡ 「‥‥‥ん様。神(ジン)様。どうにかなさいましたか?自宅に到着いたしましたよ。」  運転士に声をかけられ、神は唐突に現実へと引き戻された。 「あぁ…わりぃ。ちょっとぼーっとしてた。ありがとう、ご苦労様。」  神は、それに少し遅れて反応し、いつものように礼を言って車を降る。  そして、門を開いて玄関扉の前まで行くと、運転手だけが乗った車の方に向き直り、去っていくのを見送ってから、静かに中へと入る。  家の中には、必要最低限にしか家具や物が置かれていないため、酷く殺風景だ。 「はぁ~。昔の事、思い出すなんて珍しいな。あの頃からもう2年経ったのか。」  神は、溜息をつきつつ、被っていた帽子を脱ぐ。
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