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適当な所で、車から降ろしてもらった神(ジン)は、ターゲットを探し歩いていた。
しばらくして、何の気無しに路地裏の細い道に入り角を曲がろうとした時、角の向こうから物音がした。
何かと思い、神が角から首だけを出して向こうを除くと、二人の男が向かい合って立っていた。
“喧嘩か?”
そう思ったのもつかの間で、神は異変に気が付いた。
神から見て、左側の壁を背にして立っていた男が、壁伝いにズルズルと座り込んだまま、身動き一つしないのだ。
そして、暗くてよく見えないが、その背後の壁は他の壁より幾分黒くなっている気がした。
一陣の風が吹き、髪を掠うと共に神の下まで臭いを運んで来た。
神の鼻を掠めたのは、血臭…神の慣れ親しんだ臭いだった。
これで、もう片方の神に横顔だけを見せている男が殺人を行ったことが、明らかになった。
その男は、恐らく全身血塗(チマミ)れだろう。
神は、一抹の可能性に賭け、その男に近づく。
そして、友人に対してするような軽い感じで、無造作に話し掛ける。
「やぁ。今日は星が綺麗だね。」
その男は、話し掛けられたことで、初めて神の存在に気が付いたように驚いて、勢いよく神に振り返った。
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