【第三話】

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 そして、神が男に近づくと、男は手負いの獣のような目で神を睨みつけ、右頬にある古い傷痕を曝す。  それを見た途端、無表情になっていた神が嬉しそうに目を細めた。 「右頬に古傷、熊のような体格の大男で、粗暴な性格。殺す人間に規則性はなし。得物は、鎖鎌。薬物使用の疑いあり。やっぱ、あの情報屋は腕が良いな。お前、グリムとか呼ばれてる殺人鬼だろ?」 「!?」 「その様子だと、図星のようだな。」  すると、男は鎖鎌を床に落とし、ポケットから無色透明液体の入った注射器を取り出し、首の血管に射した。 「おいおい、早速ドーピングかよ。これだから困るぜ薬中は。」  神は、それを止めることもせず、呆れて溜め息を着いた。  その間に男は、注射器を空にし、目が虚ろになっていく。 「殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ……殺す!!」  最初は小言のように小さかった声が、最終的には叫びに変わり、グリムは鎖鎌を拾いあげると、神に向かって、突進して来た。  それを神は軽々と避けるが、グリムの勢いは止まらず、壁に激突する。  しかし、薬でおかしくなっているグリムは、痛がる様子もなく、鼻血を垂らしながら、再び神に攻撃を仕掛ける。
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