【プロローグ】

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 その薄く鋭利な刃は、なんの抵抗もなく皮膚の上を滑り、次々と赤い軌跡を描き出し、瞬く間に神のナイフを持った手やその顔を鮮やかな返り血で、染めてゆく。  ヴァリスの絶叫が、室内を満たす。  ヴァリスは、神(ジン)を払いのけようと必死にもがくが、そんなものに神は構うことなく、更にその体を弄ぶように切り刻み続ける。  床には、致死量近く大量の血液で、ヴァリスを中心に深紅の血溜まりができていた。  しかし、しばらくするとヴァリスは、意識が朦朧(モウロウ)としているのか、悲鳴を揚げなくなった。  そのことに気がついた神は、ピタリと動きを止めた。 「もう虫の息?まぁいいや、疲れたし。」  しかし、言葉とは裏腹に神は毛ほども疲れた様子はなく、更に笑みを深くする。 「さようなら、愚かなディアブロ。」  神は、ヴァリスの血で汚れた髪を掴み、僅かに床から頭を持ち上げると、額に拳銃を押し付け、引き金を引いた。  銃弾は、額に深い銃そうを穿ち、ヴァリスの体は一度だけ、ビクリと大きく爆ぜ、そのまま永遠に動かなくなった。  神は、スッと笑みを納め、冷たい目でヴァリスの死体を見下ろし、皮肉を残す。 「名誉の殉職、ご苦労様。」
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