【プロローグ】

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 そして、死体などに興味はないと言うようにさっさと、長官室から出て行ってしまう。  先ほどまでの狂い加減は、幻覚だったのかと、思わせるほどの変わり身だった。  建物から出た神は、朝から降り続いている雨を見上げ、口元を小さく笑いの形に歪めて、呟く。 「いい雨だ。」  少しだけ、足を止めていた神だったが、何事もなかったかのように傘も差さずに歩いて行く…。         †      長官を含めた警察庁本部に出勤していた警官を皆殺しにするという大事件は、大々的にマスコミに報道された。  その殺害の手口から「神(ジン)の再来」と、呼ばれ、一面を飾るトップ記事となった。  しかし、神は世間では、死刑にされたことになっているために誰の犯行かと、様々な論争を巻き起こし、人々は恐怖に戦慄した。  しかし、これは悲劇再来の幕開けに過ぎなかった。  警察はトップを失い、臨時で長官になった者が捜査に乗り出したが、前回と同様、何の手掛かりも掴めず、その間にも殺人は、幾度となく繰り返された。  結局、誰も神を捕まえることが出来ず、半年間続けられた大捜査も虚しく、お蔵入りとなった。
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