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「もう少しで、太陽が水平線に消えるな」
「うん、私ずっと楽しみだったんだ」
そう言う彼女の目は輝き、そして太陽一点のみを見つめている。
俺は突然、嫉妬の情が沸いた。
なんでかは分からないけど、林檎に見つめられていいのは俺だけな気がした。
...流石にそれは冗談だけど。
俺も変だな、太陽相手に。
「ちょっと、俺を見て」
「うん?...ぁ」
何を思ったのか、林檎は目を閉じてこちらへ顔を向けた。
俺は直感的にキスだと思った。
「馬鹿、まだ早えよ」
「...うん」
林檎はしょんぼりした声でそう言った後、再び太陽へ向き直った。
...なんで俺はもっと気の利いたことが言えないんだろう。
自分が不甲斐なかった。
だが、彼女はそんな俺と一緒にいてくれる。
「大事にしなくちゃな」
「...え?」
「いや、何でもない」
「そっか。言えるときになったら言ってね?...私はいつでも聞いてあげるからね」
...やはり、大切にしないといけないな。
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