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「じゃあ、宿に行こうか?」
「そうだな」
俺たちは、既に静まり帰った商店街を歩く。
潮の香りがまだ俺たちの嗅覚を刺激する。
商店街を抜けて駐車場に出ると、ずっと待機させてあったタクシーに乗り込む。
「いやぁ、料金がバカになんないですね」
「そんなことないですよ、いってもウン十万円ですよ」
タクシーの運ちゃんと笑いあう。
釣られて林檎も笑う。
その笑顔だよ、俺が好きになったのは。
「あとどのくらいで着きますかね?」
「えぇー、大体15分ですね」
「ありがとうございます」
時間がけっこうあるようなので、俺はウエストポーチからデジタルカメラを取り出して、先ほど撮った写真を確認する。
写真に写るのは、夕陽をバックにして微笑む林檎、そして観光名所にありがちな石碑。
《島根県 東尋坊》
俺はカメラをウエストポーチに戻し、道端で光る高圧水銀灯を数えていた。
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