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「…それでそいつはネット回線を切り忘れたんだ!
信じられるかい?
おかげでこちらは大損害、払った依頼料はすべてパァ。
情報はなにもなしだ!」
「ふうん、それで」
何気なく折りたたみ式のハンドナイフを木製の机に突き刺した。その衝撃で机の上の玩具どもが小さく揺れる。
火がついてない煙草をくわえ、男の目をじっと見つめてみた。
俺のそんな反応を見てかどうかは知らないが、男はいささか慌てたような口調で
「まぁただの愚痴さ。
聞き流してくれよ、同業者」
「同業者?」
「そうだろ、俺とあんたは同じにおいがするのさ」
悪びれもなく大きく肩をすくめる姿は昔の洋画の男優みたいだ。いや、こいつは黒人なわけだが。
同業者、ね。
ヤバいもんに手ぇ出すってんならこの世界の30%は同業者だろ。
エスとかエクスタシーとかそこらじゅうに出回っている。
かといって使ってる奴らを警察に突き出す気はない。
相談してなにになる?
捕まえてなにになる?
破滅したのなんて自己責任。
生きるも死ぬもそれ次第。
現実なんてそんなもんだ。
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