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「約束‥か‥」
そう呟いて消しゴムに目を落とす。
その手をそっと握りしめ微笑んだ。
約束なんてもうずいぶん長い間していなかった。
笑顔でまた会おうと言ってくれた見ず知らずの男子。
名前すらわからないが温かな気持ちをくれた。
二人の初めての出逢いはたった一つの消しゴムで繋がれた。
教室に残された男子は“約束の証”である半分の消しゴムを握りしめ教室をあとにした。
帰りながら『どうか二人で合格できますように』と自然に願っている自分に気づき驚いた。
だれかのために願うなんて何年ぶりだろう。
それでも願わずにはいられなかった。
温かな気持ちをくれた見ず知らずの男子にもう一度会いたかった。
“約束の証”を握りしめもう一度願う。
自分一人の合格ではなく、名前も知らないあいつと一緒の合格を。
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