第一章 管理官の犯罪

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「だから許してくれ…もう終わりにしたいんだ」 懇願する乾をよそに源氏は立ち上がり、乾の視界から消えて次の行動に移した。 まるで何手先も読んでじっくりと、勝負に出る棋士の様に源氏の頭脳は急速に回転しながら、棚に置かれたハンマーの江にハンカチを巻き付けて手にした。 十五年前にこうしておけば良かったんだ…源氏は少し後悔しながらも椅子に座ったままの乾の頭に標的を絞った。 しかし、次の瞬間乾が源氏に気付いた。 乾は椅子から立ち上がると軽い悲鳴をあげながら源氏を突き飛ばした。 源氏は起き上がりながら逃げの体勢に入った乾の足を掴んでつまずかせた。 それでも諦めない乾は源氏の手を蹴り素早く起き上がる。しかし乾は闘う事を決めたようだった。 源氏と乾は向かい合い、源氏をまた突き飛ばす。倒れた源氏の手からハンマーがこぼれ、眼鏡を落とした。 返り討ちか、甘かったようだな…健全な視界も奪われた源氏は諦めに入った。 その時、乾が声を上げて倒れた。 源氏の眼鏡を踏み潰して足の裏を切ったようだった。 よし、やった…チャンスとばかりに源氏はハンマーを取り、乾に襲いかかった。
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