第一章 管理官の犯罪

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       6 源氏は動かなくなった乾を見下ろしていた。 視界はぼやけている為、乾の表情まではわからない。眼鏡を壊されたのは想定外であり、痛手でもあった。 まあ何とでもなる…源氏はそう言い聞かせるとまた冷静に行動を始めた。 まずコーヒーをシンクに流してカップをゆすいだ。 自然乾燥だと不自然に二つのカップだけが残ってしまう、なのでカップを丁寧にタオルで水滴を拭きあげて食器棚に仕舞った。 それより眼鏡の処理だ…源氏は少し焦って眼鏡を拾う。 眼鏡はひしゃげており、乾を睨んで内ポケットに仕舞った。 それから割れた破片も拾う。曖昧な視界のまま一つ一つ丁寧に。 手探りの作業、途中で右手中指を少し切った。 痛みは無いが、ハンカチで血を拭き取る。 細かく砕けた訳では無く、拾うのは割りとスムーズに行えた。 しかし、この視界では何か見落としているかもしれない。慎重にならなければ…源氏は少しの間、目を閉じて冷静さを取り戻す様に努めた。 そして、そこから源氏は乾が恋人と写っている写真を写真立てごと壊した。 キッチンから取り出したナイフで写真の乾の顔を何度も切る。
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