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「松井さん、このトリックを使ってあなたは建物の中の人に全く気付かれる事なく、車に戻ってアリバイを手にしたんです。賢いやり方でしたね」
事件から一ヶ月、松井は幾度となくこの中学生の様な童顔の女刑事に付きまとわれた。そして今日、追い込まれている。
証拠を掴んだのか、この童顔刑事は自信満々に話していた。
「誉めてるのか?」
「ええ、全くすばらしいと思います」
「ありがとう。でも私があの部屋に居た証拠は無い」
「あなた、飲酒運転はいけないでしょう?」
「何の事だ?」
堂々と突き返す松井も堀谷の言葉に思わずきょとんとなった。
「あなたは犯行前に被害者の部屋で被害者と共にアルコールを摂取してますね?そうして油断させたんでしょうか?」
「そんな事…どうしてわかるんだ?」
「あなたの車の床に染みがありました。あなたは犯行後素早く持ち去った」
このアマ、ハメようとしやがったな…松井は相手の考えを見抜けた事に少し笑みがこぼれた。
「何を笑ってるんです?」
「あんたがどういうつもりかわからないが、嘘は良くないな。ウィスキーを誰もこぼしちゃいないさ、それに私はそんな物知らない。残念、証明は出来ないね」
自信たっぷりに松井が言うと、今度は堀谷が笑っていた。
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