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源氏は閑静な住宅街の外れにある大型マンションにたどり着いた。今は零時を少し過ぎており、辺りは水を打った様に静かだった。
エントランスに入った源氏は玄関インターホンに部屋番号をインプットした。
少し時間が経った後、インターホンのステレオからはい、と声がした。聞き慣れた男の声、乾秀男のものだった。
「私だ。少し遅れてしまったよ」
「あ、ああそうか、構わないさ。入ってくれ」
そんなやり取りの後で自動ドアが開き、源氏はゆっくりと歩いてドアをくぐりエレベーターに乗り込んだ。
源氏一人が乗っているエレベーターはとても静かで機械音だけが響いており、源氏はこれまでの事をふと脳裏に蘇らせた。
乾秀男とは源氏の大学時代からの友人だった。正確には友人であったが少し特殊な繋がりで結ばれた関係でもあったのだ。
犯罪心理学を学んでいた源氏と乾は好奇心からある犯罪を計画した。
ちょっとした詐欺、軽い悪ふざけの様なものだった。
今の振り込め詐欺の様な低俗なやり方は気に入らない…もっと華麗に、もっと美しく。
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