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「事件解決おめでとう」
源氏と乾はテーブルを挟んで向かい合いながらコーヒーを口にした。
「ありがとう。優秀な部下が活躍してくれているからね」
「前に言ってた女の刑事かい?」
「ああ…」
源氏はコーヒーを口に運ぶ。
「世間話なんか結構だ。それより今日僕を呼んだのは何か理由があるんだろ?僕はそれを聞きに来た」
冷静に乾を見つめながら源氏は言う。
乾は思わずたじろいだ。
「そうか…それならさっさと言うよ。もうさ、限界だと思うんだ」
「何が?」
「わかってるだろ?十五年前の事だよ」
乾の声がか細くなった。
「それがどうかしたのか?」
「最近、夢を見るんだ。あの頃の事のさ…」
「だから?」
「こんな事にずっと苛まされてるなんて耐えられない…」
「もうとっくに時効だよ」
苛立ちを見せる乾に対して源氏はどこまでも冷静だった。
「しかし、公表して償う事は出来る。今からでも遅くないと思うんだ。」
「馬鹿な事を…」
源氏は乾の言葉に呆れを隠せなかった。
乾は精神的に弱く、そこだけが源氏にとって不安材料だった。
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