第一章 管理官の犯罪

9/12
前へ
/90ページ
次へ
       5 「事件解決おめでとう」 源氏と乾はテーブルを挟んで向かい合いながらコーヒーを口にした。 「ありがとう。優秀な部下が活躍してくれているからね」 「前に言ってた女の刑事かい?」 「ああ…」 源氏はコーヒーを口に運ぶ。 「世間話なんか結構だ。それより今日僕を呼んだのは何か理由があるんだろ?僕はそれを聞きに来た」 冷静に乾を見つめながら源氏は言う。 乾は思わずたじろいだ。 「そうか…それならさっさと言うよ。もうさ、限界だと思うんだ」 「何が?」 「わかってるだろ?十五年前の事だよ」 乾の声がか細くなった。 「それがどうかしたのか?」 「最近、夢を見るんだ。あの頃の事のさ…」 「だから?」 「こんな事にずっと苛まされてるなんて耐えられない…」 「もうとっくに時効だよ」 苛立ちを見せる乾に対して源氏はどこまでも冷静だった。 「しかし、公表して償う事は出来る。今からでも遅くないと思うんだ。」 「馬鹿な事を…」 源氏は乾の言葉に呆れを隠せなかった。 乾は精神的に弱く、そこだけが源氏にとって不安材料だった。
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!

390人が本棚に入れています
本棚に追加