見えぬ敵

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二人は部屋に戻った。 愛は冷蔵庫を見ていた。 「今日は、魚にしよ~。」 夕食の準備にかかる。 フライパンに火をかける。 「これも、魔術の勉強になるからね。」 愛は包丁で魚に文字を刻むと、蛇口をひねり水を出す。 「水の祝福。」 魚が水につつまれる。 そして、水はそのまま排水溝に落ちていった。 まな板に、綺麗になった魚がおかれた。 「よし。」 魚を焼き始める。 と…隣から歌声が聞こえてくる。竪琴の音からして、声の主は優一だとすぐにわかる。 「綺麗な声だな…。」 しばらく聞いていたが、その声と音は激しさと荒々しさを増している。 どうやら、風読みではない。 闇種族の言葉はわからないから、優一の歌っている言葉はわからないが… (なんだろう。戦争をイメージさせる感じだ。) 外を見ると、夜がゆがんで見えた。 「!?」 優一はいっそう激しく歌を歌う。 ゆがんだ夜の景色は落ち着き、元の夜空へ戻った。 「魔法?一体…?」 愛はできた料理を盛り付けながら外を見ていた。 どうしても気になりベランダに出る。 「優一?」 優一の姿がよく見えない。 夜目がまだ利いていないだけか。 「ゴホ…ゴホッ…!!」 「?」 咳をする声に目をこらすと、優一の手が月夜に照らされて見えた。 「優一!?大丈夫?」 「…愛か…?」 優一は顔をのぞかせた。 「また咳…。本当に大丈夫?」 「ああ。なんか、魔術を使うと、咳が出る。」 「そうなの?なら、魔術は控えたほうが良いかも…って、使ってたの?」 「ああ。必要だからな。ためしに空に向かって撃ってみろ。」 優一は空を指す。
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