見えぬ敵

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学校に入る。 机に荷物を置き、用具を入れる。 「愛。」 「!?」 気がつくと、優一の顔が近くにあった。 「な、なに……?」 「果物、食べたい。」 「あ、うん。ちょっとだよ?」 愛はタッパーをあける。 彩り鮮やかな数種類の果物が、中に敷き詰めてあった。 「今日はいっぱい種類を買ったのを、切ってきたよ。」 「…。」 優一は一つ摘むと口の中に入れた。 モグモグと無表情で食べるが、手は止まらないようだ。 次のを食べようと、手はすでにカットフルーツに手がのびていた。 「…。」 「そんなに急いで食べなくても…。」 優一はそれぞれ違うのを食べている。 「……どれも美味い。」 優一はそう言った。 (あ、今、少し笑った。) 優一は普段は感情は出さない。 特に人が沢山いる場所では…… カットフルーツが少なくなると思ったのか、手は止まった。 「もういい。」 「ああ。」 タッパーにふたをし、しまう。 優一は自分の席に座る。 そして、窓を開けた。 風にあたり、外を見ると何故か楽しそうに笑っている。 自然魔法使いだけがわかるという。 風を読み、話し、声を聞いているだとか……。 (いつか、優一みたいにできるといいな。) 優一を見ていていると、廊下が騒がしいのに気がついた。 「見て見て。あれが噂の転校生だってさぁ。」 「前、お昼に見たんだよ。マジにカッコいいから~。」 「うわっ!!本当~!」 優一を見て、ひそひそ話す隣のクラスの人達。 (やっぱり、優一はモテるよね~。あの姿だと絵にできそうだもん……。) 「!?」 優一は、何か思ったのか、急に険しい顔をすると外を見た。
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