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優一は空を見ていた。
そして、何かを唱えた。
歪なほどに強大な魔力。
だけれど、その他にも違う魔力を感じた。
「光魔法を使っていた。」
「うん。でも、何故?」
「魔術師が、どこかに居るんだよ。」
人間が魔術を行えるわけはない。
そして、しっかり、その魔力を感じれたこと。
追っ手がきたのか?
まだ、二人を消そうとしている?
一体、何のために?
「誰かはわからなかったか?」
「ノイズだからけだよ…。あんな魔力、感じたことない。」
「戦ったことは?」
「私、小さい頃の記憶がないの。それから、豪邸の聖堂で育てられたから…。だから、下級の私と、偽りのお嬢様と戦うことはなかった。」
「…すまん。嫌なこと聞いた。」
「うぅん。優一に話せてよかった。」
愛はニッコリ笑う。
優一は、あまりいい表情はしなかった。
「しかし……追っ手がくるってことは、奴ら、何考え…て…」
優一は途中で言葉を詰まらせた。
その瞬間だった。
「ゲホッ…!!」
「優一!?」
「ゲホ…ゲホゲホッ……」
優一は咳をする。
だが、その咳はとても苦しそうに…。力が抜けたように地面に手をついた。
「優一!?大丈夫!?」
優一に寄り添う。
咳はやがて消えた。
「…っ…もう平気だ…。」
「でも…」
優一は息を元に戻すと、ふわりと微笑んできた。
「ほら、もう大丈夫だ。」
「優一…。」
「…心配すんな。」
優一は愛の頭を撫でる。
「でも……優一、苦しそう。無理してない?」
優一は笑うことをやめる。
すると、撫でていた手が、いきなり頭を掴み、ぐぃっと引き寄せた。
優一はそのまま抱きしめてきた。
「ゆ…うい…」
「俺がくたばってられるか。愛を守らなきゃいけないのに、何を無理する必要がある?」
「…。」
「あー、でも一つ問題ができた。」
「?」
優一はゆっくり体を離す。
「人払い解除してたから、誰かに今の見られたかも。」
「へ?」
愛は我に返り、周りの状況を見た。
学校の庭の真ん中で…
そう思うと、顔がブワリと赤くなった。
「優一…!」
優一は少し笑ったが、またいつもの無表情に戻る。
「けど、言ったことは忘れるなよ。コレは俺の問題だ。」
「…。」
まっすぐな瞳に、言葉を失った。
「何があっても、俺はお前を守るから。」
優一は、ただそれだけを言った。
「…うん。」
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