見えぬ敵

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愛と優一は教室に戻ってきた。 だが、教室が少しおかしいように感じた。 「?」 やけに静かだった。 優一は、そんなことにも気を止めず席に座った。 愛も席に座る。 (あれ?ノートなんて出していったっけ?) あやふやな記憶に首をかしげながら、ノートをしまった。 次の授業の教材を出す。 チャイムが鳴り、先生が入ってくる。 だが、その姿は騒がしかった。 「ちょっと待っていてください。しばらく自習です。」 それだけ言い残すと、慌てた様子で教室を出て行った。 「は?自習?」 「やったぁ~!でも、なんで?」 「ずいぶん慌ててたね~。」 教室がざわざわしだす。 「見に行こうぜ。」 「だめだよー。」 クラスの男子が廊下に出る。 「そういえば、斉藤さんと、神崎さんがいないよー?」 「説教でもくらってるんじゃない?」 その言葉に、不審を覚えた。 (二人いない…?) 優一はクラスの騒がしさに、少し居心地が悪そうだった。 「優一…」 「ん?」 「なんだろうね…、自習って…」 隣もざわついている。 「そういえば、篠山さんと、新井さんがいないよね。」 そう聞こえてきた。 (4人もいない…?) 隣のクラスの人がとことこと教室を抜け出している。 だが、その瞬間先生が来た。 「こら!!貴方達は戻ってなさい!!」 「先生~、何かあったの?」 「いいから戻っていなさい!!」 先生が険しい顔で怒鳴る。 そうすると、また走っていった。 なにか様子がおかしい。 愛がそう思った瞬間、優一が席を立つ。 「優一?」 「愛、わかるか…?」 「?」 「殺気と、嘲笑だ。」 優一は外を見ている。 愛には何にも感じ取れない。 「何も感じないけど…」 「なんだ…?」 急に学校内にサイレンの音が鳴り響く。 救急車だ!! 野次を飛ばしたのか、生徒が窓際に集まってきた。 「!?」 「い、いやあああああああああああ!!」 「なんだあれ!?」 「おい、冗談だろ…?」 急に悲鳴が上がった。 その悲惨な光景に、みんな目を疑った。
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