見えぬ敵

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まるで焼け焦げたような制服に、傷がたくさんある。 血は固まったのか、熱で固まったのかはわからないが… 血が、制服に飛び散っている。 サイレンの音は救急車だった。 救急隊員が走っていく。 優一はそれをじっと見つめた。 「優一、これ…」 「傷から、魔力を感じる。」 小さな声で愛に告げる。 (魔力…?何故…魔術師が人間を…?) 一人フラフラ立っている女の子がいた。 彼女に特に大きな傷はなく、制服が少しボロボロになっていて、包帯が巻かれていた。 先生に支えられ、呆然と立っている。 その他の女の子が3人ほど救急車に乗せられると、急ぐように病院へと搬送された。 教室はしばらく沈黙だったが、一人の男子が声を荒げた。 「おい、あれは一体なんだよ!誰があんな酷いことを…!」 誰も、その言葉に答える者はいなかった。 「愛。少し、俺は授業後、調べ物をする。」 「どうするの?」 「帰るときは一緒に行動だ。しばらく教室で待ってろ。すぐ戻る。」 優一は、それだけ言うと救急車を見続けていた。 (優一…) 何故、人間界に魔術師がきたのか…? 何故、人間に危害を加えるのか…? (どうして…?光種族って、こんな人たちだったの…?)疑問と絶望が、一気に押し寄せてきた。
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