見えぬ敵

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愛は教室でずっと待っていた。 教室には、誰もいない。 「優一…。一人で大丈夫かな…?」 ため息をつく。 と、 「なぁ、清水さーん!」 「?」 二人組みの男子が声をかけてきた。 「ようやく声かけれたよー。」 「いつも、原といるから、しゃべりづらかったからさー。」 「は…はぁ…。」 二人はぐぃぐぃ近づいてくる。 「俺さー実は、転校初日から気になっててさー。」 「あ、あの…」 こんな風に迫られたことがない。 今は優一がいないから、どうすることもできない。 (誰か…) 「何をしてるんです?」 「?」 突然、廊下から声が聞こえた。みると、相澤先生が立っている。 ニッコリ笑っていたが、機嫌はよくなさそうに見えた。 「あ、せ、先生…。」 「もう下校時間ですよ。いつまで教室にいるんですか?忘れ物でしょうか?」 笑いながら問いかける相澤先生に、二人組みは面白くなさそうに、教室を出て行った。 「…大丈夫ですか?」 相澤先生は近くまで来ると心配そうに見つめた。 「あ、はい。」 「貴方も、下校時間ですが、どうして教室に?」 「えっと、原君と待ち合わせしてるんですけど…」 「……そうですか。」 相澤先生は愛の前の席に座る。 「?」 「また、あのような穢れが近づかぬよう、私がいますよ。」 「あ、あの…大丈夫ですよ?」 「先ほどのを見る限り、少し大丈夫そうには見えませんが…」 相澤先生は優しく笑う。 「うっ…。」 「貴方は、嘘がつけないですね。フフフ…。」 (あれ、笑い方が誰かと似てる…) 相澤先生は外を見た。 「あの、先生…あんな事件があったのに、ここにいて大丈夫ですか?」 「貴方を一人にするのが、一番危ないと思いますがね。事件ですか…。どうやら、何か窓に変なイタズラがあったようです。」 相澤先生は、短く説明する。 「イタズラにしては、やりすぎてませんか?」 そういうと、相澤先生は愛をまっすぐ見た。 「そうですね。"イタズラ"にしては…。」 相澤先生はそのまま愛を見ている。 「どうしたんですか?」 「いえ。少し……見ていたくてですね。貴方の瞳が、とても綺麗なので…」 先生の言葉にドキリとした。 だが、それは同時に深い記憶を掘り起こそうとしている。 「さて、私はそろそろ失礼します。お迎えも、そろそろ来るようですしね。」 そういうと、相澤先生は教室を出て行った。 愛は、その姿をずっと見ていた。
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