見えぬ敵

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愛は構える。 「本当にいいの?」 「ああ。」 愛は光をためると、空に向かって撃った。 だが、魔法はいきなり打ち消され、黒い膜のようなものが波を打った。 「な、なにあれ!?」 「魔力を持つものだけが見れる。闇の結界だ。」 「そのための歌?」 「聞こえていたのか。詩人は、自然の力を借りてこそ強大な魔力と、体力の消費を抑える。」 「…でも、なんで結界なんか…」 「そうしなきゃ、魔術師がいつくるかわからないからな。」 優一は空を見上げていた。 警戒している。そして、恐れている。 再び、戦うことを… 「あんなことは、お前の前で二度としたくない。」 優一の戦いはすさまじかった。 まるで慣れていた。 そして、躊躇もしてなかった。 聖職者を何人も殺し、血に塗れていた。 そんな姿は、優一にとっても苦痛だった。 「お前は、もう種族から離されたが、それでも、同じ種族が傷つくところなんて見たくないだろ?」 「…でも、優一は…」 「俺はお前を傷つけたくない。けど、守りたいのもある。だから…なるべく、一緒にいる時間も欲しいが…」 優一は切なそうな顔をした。 最近、優一が表情豊かになったような気がする。 それに、微笑む。 「あ、優一。よかったら、一緒に晩御飯食べない?」 「晩御飯?」 「なるべく、一緒にいる時間が欲しいなら、よかったら…なんて。」 優一はベランダを乗り越えようと足をかける。 「だから、玄関から入ってって!!」 「あ?」
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