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やがて朝が来る。
「ん~…。」
朝から鳴く、せみの声が目覚まし時計になっていた。
愛は布団から出る。
「朝ごはん作らなきゃ。」
急いで着替え、準備にかかる。
弁当箱を出す。
「優一の分も作ってあげよ。」
愛は、朝食と弁当を作りながら色々考えていた。
学校で起きた奇怪事件。あの相澤先生の不可解な行動。そして、優一。
「私、甘えすぎだよね…。情けないな。」
ぎゅっと胸を掴む。
魔力を感知しているのはいつも優一で、攻撃を防いでいるのも優一で…
一体…自分は魔術を何のために学んだのかもわからない。
「よしっ。うじうじ考えてても仕方ないよね!今日から、私も魔術を極めなきゃ!」
朝食を作りながら、そう考えた。
おかずを弁当につめる。
「そういえば、優一、ちゃんと朝ごはん食べてるのかな?」
昨日の朝食の状態を見ると怪しかった。
「闇種族のご飯が見てみたい…。」
そう思いながら朝食を食べる。
仕度を済ませ、アパートから出ると、いつものように優一が階段で待っていた。
「あ、優一。おはよー。」
「…おはよ。」
「…?」
優一の挨拶が、何かそっけない。
それどころか、元気がない。
「優一、どうしたの?」
「何が?」
「だって、元気がない…。」
「…眠いだけ…」
「そっか。」
愛はそれ以上追求しなかった。
優一は、聞いて欲しくないような表情を一瞬したからだった。
「ねぇ、優一。今日、私お弁当作ってきたんだ。」
「俺の分を?」
「うん。パンだけじゃ、足りないでしょ?だからね…」
「ありがとう。助かる。」
優一はそれ以上はしゃべろうとしない。
やはり、何か様子がおかしい。
「優一…」
「ん?」
「うぅん。なんでもない。」
「そうか。」
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