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勇者たちが魔王ミルドラースを倒してから 世界は平和に包まれた。
グランバニアに凱旋した勇者は王として国を治め始めたが、幼い頃から奴隷労働と戦いだけに明け暮れた勇者にとって政治はあまりにも難しく、グランバニアの情勢は大きく揺らいだ。
時に駆け引きを求められ、時に大のために小を捨てなければならない政治というものは勇者の良心を容赦なく切り裂いた。
罪人にも情けをかけてしまう勇者は優しすぎた。
次第に魔王を倒して英雄扱いされていた勇者にもこんな声が挙がった
「勇者は役立たずだ」
ある日、勇者が街で遊ぶ娘と息子を迎えに行くと、息子たちが大勢の子供に囲まれているのを見つけた。
「やーい お前の父ちゃんは無能な勇者なんだろ!勇者は政治なんてわからないただの能なしだ!」
「勇者なんてどっか行っちゃえ!お前たちも仲間に入れてやんないからな!」
娘「…ひっぐ…えぐ…」
息子「…」
肩を落として城に帰った勇者に大臣が言う
大臣「勇者様 誠に申し上げにくいのですがこのままでは国が滅びます」
勇者「ごめんね 僕が無能なばかりに」
大臣「勇者様が魔王討伐の旅に出て不在の間 私が政治を仕切っていた時の方がまだグランバニア財政も安定していました」
勇者「…」
大臣の言葉は勇者に決心をさせた。
勇者は王位を捨て 遥か離れた村に家族で移住したのだった。
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