6人が本棚に入れています
本棚に追加
/60ページ
貝
コポッ……
小さな気泡がひとつ
コポッ…ゴポッ……
小さい気泡と大きい気泡が混じり合いながら
空へと昇る
誰かが
「綺麗だ」
と呟く
また、誰かが
「哀しいね…」
と呟いた
青と蒼の混じった空に…
哀しいほど綺麗なエメラルドグリーンの空に…
残酷なほど冷徹なマリンブルーの空に…
その頃小さかった僕は、何が綺麗で
何が哀しくて
何が冷酷なのか解らなかった
ただ…一心に…
あの気泡の様に空を舞ってみたい
そう思った
年数が経つにつれて
気が付いた事が一つ
僕は……舞えない
だって、僕は深い深い
深海にいる“貝”だから
今度生まれ変わる時は
深い海じゃなくて
本物の空を舞いたいなぁ
最初のコメントを投稿しよう!