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しかし勢い余って僕の体は彼女に押し倒される形となった
「こんなに近くにいるのに」
彼女の白く柔らかい手が僕の頬に触れる。彼女の手は冷たい。彼女の温度が僕の温度を冷やしてくれるため気持ちがいい
「私とあなたは、遠くにいる」
僕の彼女は、物に触れる不思議な幽霊。
彼女は死者で、僕は生者。そこには見えない壁があるけれど
「私、待ってるよ」
彼女は顔を近づけてくる。その顔はどこか哀しく、寂しい顔をしている。
「あなたが死ぬ瞬間を」
次の瞬間、互いの唇が触れ合った
唇から口の中の温度がどんどん下がっていくが、僕は全く気にしちゃいない。
彼女は待ってくれているのだから。
長く、永く
一緒の世界に居られる日を夢見て
唇が離れていく。
彼女はいつの間にか涙を流していて、僕の顔に零れ落ちる
「泣くなよ、もう少し待っててくれ」
彼女の言葉は冷たいけれど
彼女の想いと涙は
いつも暖かく心に響いていく
僕は彼女を抱いて、静かに瞼を閉じる
閉じた世界から聞こえた声は
とても愛しく
暖かい言葉だった
「死んじゃえ」
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