寄れば?

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“美食亭 牧島夢” イディア学院、入学式当日。 新入生になる予定の牧島シンは、自作の目覚まし“絶対起床メガヘルツ”が不快音波により自身の機能に異常が発生し、と自爆するという災難に苛まれていた。 起きたはいいが後始末が大変で、飛び散った無数の破片を回収してから青い髪に付いた破片とススを払う、気付けば入学式開始十分前。 彼は咆哮した。 「やばい! 腹が減った!」 制服に着替えながら階段を下りたその時だった。厨房でチーンと良い音が鳴って数刻、まるでフリスビーのように芸術的な弧を描く高速回転で、パンが空中を滑空してくる。 それをガブリとキャッチ。礼を込めてグッジョブの親指立て。母であるイノリも、 「(^-^)b」 にこやかな表情で返す。 だが一つの不満だけが心残り、彼はワナワナと震えていたのだ。 「くっそー、どこのマンガか知らん行為をこの俺がやる羽目になるなんて、なんか屈辱だ……」 その時だった。両親の寝室の入口出口である襖が、粉砕されるほどの勢いで開かれる。そして現れたのは寝癖のひどい父、オウ。 「セオリーを越えればいいのだァァァ!!」 シンの並ではない圧倒的迫力。 そう、オウは常にこの状態で生きてきたのだ。 「セオリーを、越える……!?」 「そォうッ! セオリーを越えてこそ新しいジャンルが生まれるッ! さァァァ行けェ息子よォォ!! 新しい未来を切り開くのはッ、お前だァァァ!!」 「分かったよ父さん! 俺は未来を越えてみせるぜぇぇぇ!!!」 「(^_^;)」 どことなーく話がずれているような気がしたイノリだった。
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