かく密室を叩く

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何がなんだか分からない。 ここはどこだ? なぜ僕はここにいる? 怒りが湧いた。不当な拘束だ。 早く僕をここから出せ。 何なんだ、なぜここにいる。 この部屋はなんだ。 イライラが止まらない。 現状、僕におかれた状況を把握できない。 僕は、誰だ? あらゆることを思い出せない。 いや、最初から記憶がないようだ。 まるで、自我をはっきりもったまま、 新たに生まれてきたような。 自我の確認と同時に、部屋の内部の観察を行う。 当然、分かるはずがない。僕には記憶がないのだから。 しかし、知っている感覚なのだ。 僕はこの部屋を知っている。 窓が一つ。高さからして2階。 景色は田畑と遠くに見える山。 窓に手をかける前に分かった。 この窓は開かない。そして壊せない。 他のものを確認する。 棚を賑わせるものは、雑貨、化粧品、漫画、ハードカバーの本、文庫小説。 そして棚に並んで置かれた机。 ふと、気がついた。ドアがない。 ドアがないことに気づかなかったどころか、僕は出ようとすら思わなかった。
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