かく密室を叩く

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僕にとってこの部屋は安全、いや、僕の意思では出られないのだ。 そんなことばかりが、予め設定されたように頭脳で理解できていた。 だからこそ怒る。感情は高ぶる一方。それ以外の感情が起こらない。 「まったく、馬鹿馬鹿しいことばかり理解できている。だから気に入らないのだ。こんな扱いは不当だ。」 怒りをぶつける場所がない。 たとえものに当たったとしても、壊れない。 状況に置かれた意味は分からずとも、状況の設定をすべて理解している。 このように自分を弄られているような違和感と不快感がますます僕を憤らせる。 「少し、落ち着いてください。」 部屋の中を見ると、 一人の少女がいた。 さっきは、確かにいなかった。 少女を見た僕は、直感した。 憤る僕は、急に冷静になった。 彼女を、大事な誰かと判断したからだ。 そして僕は彼女を知っているはず。 怒りで彼女を傷つけてはならない。 「すまない、取り乱した。」 僕は努めて落ち着いて言った。 「ここは一体どこだ?目が覚めたらここにいた。」 少女は気まずそうに俯いた。 「私には答えられません。」 そうつぶやき、顔を上げると、 「あなたは、ここから出なければなりません。」 僕を見据えて力強くそう言った。 まさか。出られないと分かっていながら、この少女には出ろと言われる。 いよいよおかしくなってきた。 笑えてさえきた。 「何を言ってる。出られないんだよ。それとも、あなたが出してくれるのか?」 「私はあなたを送り出せません。」 少女はまた申し訳なさそうに俯く。 「なら、まずあなたは一体誰だ? 僕はあなたを知ってる。そして分かる。僕がここにいるのは、あなたがやったことではない。だけど、あなたは僕がなぜここにいて、どうやって出ていくのか知っているんだろう?」 少女の顔が、ふと無表情になる。 「言えません。」 この返答は分かっていたことだ。 少女を詮索するのはよそう。 おそらく、何をしても答えない。 それよりも、予め決められたこの全ての状況と、僕がそれを脳で理解している状態に抗うべきだ。 必ずここから出てやる。
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