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出るための方法とは何かを考えなければならない。
不可能と理解しながらも、窓を壊しての脱出を考えた。
「窓を壊す。いいな。出なければならないのなら、出てやる。」
少女に確認を取るように言った。
少女は答えなかった。無表情に僕を見ていた。
止められるかと思ったが、
少女はただ見ているのみ。了承とも拒否とも取れない。
ならば、思うままに行うのみ。
机とともにあった椅子を担ぎ、窓に向かって投げつけた。
椅子が窓にぶつかるまでの時間が緩慢に見えた。
そしてゆっくりと、確実に硝子へと衝突する。
硝子が割れる音を確かに聞いた。
割れている。
あっけなく出られるではないか。
しかし、その瞬間疑問が湧いた。
部屋を出られる、しかし出たとして依然、僕は僕が分からないではないか。
出たところで、どうすればいい。
どこに行けばいい。
ここにいるほうが安全ではないのか。
記憶、自分のアイデンティティを手に入れなければ、僕は僕として存在しないではないか。
出られると分かった瞬間、
出ないほうが良いという理由や条件ばかりが湧きいでる。
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