かく密室を叩く

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窓を割ったにも関わらず、一向に出る気にはならなかった。 思考して数分、窓を見ると元に戻っていた。椅子もだ。 僕が出ないと迷ったからだろうか。 それとも、迷うならばここにいろということなのか。 物理的にありえないことであるにも関わらず、 元に戻った窓や椅子に、何ら不思議を持たなかった。 ふと、少女に目をうつす。 少女は、変わらず無表情でいた。 しかし、僕が諦めて少女に関心を向けたとき、 少女は俯き言葉を探す表情となった。 僕は一時、脱出を諦めた。 少女に話しかける。 「あなたに答えられないことは、答えないでいい。でも、ここにいるということは、あなたも出ていくべきなのか、もしくは僕の助けとなる存在ではないのか。それとも、君もアイデンティティを切り取られ、必要な情報のみを与えられ、ここにいる人間なのか。なんでもいい、話せることを話してくれないか。」 少女は、僕の顔を伺いつつ、答えた。 「私は、つくられたものです。この部屋にいるべき存在です。きっと私がここからいなくなるのは、あなたが出ていかれた後でしょう。」 先程尋ねたときは、言えませんと言った。しかし今度は少し何かを匂わせる発言をした。 「あなたがここにいる間、一切のことは私に任せてください。」 僕は観念した。少女の言を考えるとすると、 僕は出なければならないのに、しばらくの間、出られないということだ。 ここにいる間、とはそういう意味だろう。
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