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少女と、しばらくこの部屋で過ごさなければならない。
僕の頭から脱出するということは消えた。
やがては考えられなくなり、
この人格さえも定められた、または条件による反射でしか動かないものになるのだろうか。
アイデンティティのない今、自分で考えられるこの自我のみが、僕にとっての頼りであるのに。
それは抗うことのできないことかもしれない。
だとすれば、この少女との生活の中に鍵を探すことをすべきなのだろうか。
もしかしたら僕はすでに、定められた条件を探しつつあるのだろうか。
自我を奪われる感覚など、自分には分からない。すでにそのレールに敷かれているのならば、もう任せるべきなのだろう。
一人考えごとをしていると、
少女が話しかけてきた。
「ごはんに、しませんか?」
なんとも間の抜けた言葉に、
思わず笑ってしまった。
先程までの沈黙の空気を華麗に一蹴した。
「そうだね、腹が減っては何も考えられない」
腹は減っていなかったが、少女に従うことにした。
ここでしばらく生活するとなれば、生活らしいことをすべきだろう。
少女は支度を始めた。
「僕は何かしなくていいのかい?」
言ったでしょう。と少女は言う。
「ここにいる間、私がお世話します、と。」
窓の外の景色は、オレンジから藍色へ、そして闇へと移ろうとしていた。
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