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国連軍カラーの青に塗装された77式戦術歩行戦闘機『撃震』のコックピットで、白銀武少尉は呟いた。彼の目に映るのは、宇宙へ向かって加速する『世界最後の』駆逐艦。
『オルタネイティヴ5』。種としての人類の生存を最大の目的とする計画で、十数万人の選ばれた人間をバーナード星系に移住させるプランと、米軍が開発したG弾の大量使用で地球上のBETA(Beings of the Extra Terrestrial origin which is Adversary of human race;人類に敵対的な地球外起源種)を殲滅するバビロン作戦が対となったものである。
武が見上げる駆逐艦は、この計画によって地球から打ち上げられる最後の駆逐艦である。計画がスタートしてから5年が経つが、ラグランジュ点で建造されていた移民船団に収容できるのは僅かに十数万人。それ以外の人類が生き延びる為に残された手段は、BETAを地球上から駆逐する事のみ。しかしその際に使用されるG弾は、被爆跡地に半永久的に重力異常を引き起こしてしまう。仮に地球上のBETAを駆逐したとしても、人が住めるのは限られた地域のみとなってしまう。
武「・・・守ってみせる。」
武は現在、第207臨時小隊の小隊長を務めている。とは言っても、訓練兵時代の仲間を集めただけの部隊であり、実戦での出撃も無い。これから経験するであろう実戦に対して漠然とした不安はあるものの、彼の心の中には『地球を守る』という決意が生まれていた。
女「何か言ったか?隊長。」
武「いや、何でも無い。」
武にそう言って声を掛けたのは、御剣冥夜少尉。彼女は将軍家の遠縁であり、その血筋に恥じぬ気高い精神を持っている。そして何より、武が愛する女性。彼の恋人である。
武の近くでは、冥夜の他に榊千鶴少尉、彩峰慧少尉、珠瀬壬姫少尉、鎧衣美琴少尉の4人が警戒に当たっている。彼女達も全員、武と同じ撃震に搭乗している。
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