Episode2 ‐本物の戦場‐

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 網膜に投影された武以外の皆の表情は暗かった。良く考えれば当たり前である。武以外は全員、横浜にG弾が投下された際に、直接ではなくともその被害を見ているのだ。たとえ他国であっても、横浜を重力異常地帯に変貌させたG弾が再び使用された今、彼等はどんな心境なのか。武が軽々しく『分かる』と言って良いような気持ちではない事だけは理解できた。  そんな事を考えていると、やっとデータが更新された。 武「え・・・?」  エヴェンスクハイヴ周辺は、更新前とは全く異なる状態となっていた。地表構造物は跡形も無く消え、2つの大きなクレーターが出現していた。  『凄ぇ・・・。』と声に出しそうになったが、武は思い止まった。 諫渚「アルファ1より各機。もうすぐ上陸だ。機体も心もしっかり準備しておけ。」 全員「了解!」  もう何度も行っているが、武は機体のステータスをざっとチェックした。各部以上はない。後は発進を待つのみ。『もうすぐ』と言っていた時間がやたらと長く感じられる。気が付くと操縦桿を握る指がガチガチに固まっていた。彼は操縦桿から手を離し、自分の胸に当て目を閉じる。緊張で早くなっている鼓動が感じられる。 冥夜「武、どうしたのだ?」 武「何でもねぇよ。それより、作戦中にお喋りしてると大尉に怒られるぞ?」  突然名前を呼ばれて驚いたが、武は平静を装ってそう答えた。 冥夜「私はそなたを心配して・・・!いや、すまぬ。許すがよい。」 武「俺に謝る事はねぇだろ?」 諫渚「お喋りはその辺にしておけ。出番が来た。」 武・冥夜「申し訳ございません!」  武は静かに深呼吸をすると、操縦桿をしっかりと握りなおした。 諫渚「行くぞ!アルファ中隊全機発進!」 全員「了解!」  戦術機母艦から8機の撃震と4機の武御雷が飛び立ち、ユーラシアの大地に着陸した。訓練の賜物だろうか、緊張していた割には体が勝手に動いてくれたような気がした。周囲を見渡すと、既に展開を終えたいくつかの部隊の機体が見えた。
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