木瓜~ひと目惚れ~

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『僕と結婚を前提に お付き合いして下さい!』 誰だ、こいつは。 さて、話は約5分前まで遡る。 あたしは、慌ただしく旅行に出掛けた母に変わり、花壇の手入れをしていた。 本日は有給休暇。 仕事が楽しくて仕方ない あたしに、部長が無理矢理押し付けてきた休暇だ。 “お休みするより、お仕事していたいんですぅ”とか可愛らしく言ってみたが、年末で忙しくなる前に休んどけという 要らない気遣いをしてくれた。 あのハゲめ。年末纏めて休もうとか考えてたのがバレたか。 で、庭で麻婆茄子用の茄子を ちぎっていると、来客を知らせるチャイムが鳴ったのだ。 そういえば、今日ネコのマークの宅急便が来るんだっけとか母の言葉が一瞬頭をよぎる。 『はあい。今、出ます。』 付けていた軍手を外し、印鑑を持って玄関へ急ぐ。 覗き穴から相手を見ると、相手は緑の帽子に薄い緑の制服を着た男の人だった。 軽く髪を整えて、鍵を開ける。 『望月みちる様の御自宅で宜しかったでしょうか?』 『はい。そうです。』 20代後半くらいの男を見上げる。うん、爽やかなイケメンだ。声もなかなか…。 『ここと、ここに印鑑お願いします。』 指差しされた所に印を押していく。1箇所目は、伝票。二箇所目は、あれ?伝票? 『あの…これ婚姻届じゃありませんか?』 もう一度見上げると、イケメン君は これまた爽やかな笑顔を向ける。 そして、その直後の言葉が『結婚を前提にお付き合いして下さい。』だった。
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