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女なんて、醜いだけだと思っていた。
騙される前に騙してしまえば、傷つくことはないと思っていた。
けれど今、ベッドの上で手を繋いで、俺に安心をくれるのは、心底嫌った女という生き物。
美樹に出会い、梨恵を愛して、俺の傷は少しの風では痛まなくなったのだろう。
この先、またこの傷が痛んでも、俺はきっと立ち止まらないと誓いたい。
そうしていつか、梨恵と共にあの家を訪れたい。
こんなに優しい気持ちを教えてくれた梨恵と。
そうしたら、きっと笑える。
いつか、父と梨恵と、三人で。
その時こそ、二人の母親を許せるだろう。
何が欠けても、今の俺はいなかったのだから。
この痛みがなければ、こんなに深い優しさには気付けなかったはずだから。
痛みも、苦しみも、悲しみも、辛さも。
そして優しさも、愛しさも、嬉しさも。
俺という不完全なパズルの1ピース。
そう思えば、悪くない。
-end-
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