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いつの間にか、真っ暗な場所に立っていた。
辺りは暗闇に包まれている。
しかし、何故か自分の姿は光を放っているかの様に指の先まではっきりと見えた。
ふと、自分の体へと下ろしていた目線を上げると、いつの間にか一人の青年が立っていた。
黒髪に黒縁眼鏡をかけたスーツ姿だ。
「初めまして。僕は此処で幾つかの物語を作り出し、訪れたお客様に本を紹介するという商いをしています」
青年は、私と目が合うと一礼して笑みを浮かべた。
「貴女様も大切なお客様の一人。貴女様にぴったりの話を紹介しましょう。では、紹介する本を探してきますので、そこの椅子に座ってお待ちください」
その青年は、浮かべた笑みを崩すことなくいつの間にかあった椅子を私に勧めると闇に消えてしまった。
私が勧められるがままに椅子に座ると、それを見計らったかのようにして右手にはティーセットの乗ったトレイを、左手には一冊の本を持って青年が戻ってきた。
青年は手に持っている物をいつの間にかあった机に置くと、液体の入った二つのティーカップの内一つを私の前に置き、もう一つを青年が座るであろう椅子の前の机に置いた。
「アールグレイという紅茶です。おかわりもありますのでご自由にどうぞ」
青年は私に紅茶を勧めると、椅子に座って持ってきた本を私の方へと差し出した。
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