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瑠生も私を同じように思ってくれてる。
何よりも瑠生を信頼できる。私は瑠生のためなら、命をかけられる。
瑠生は慎也を譲ってくれたの。怨んだり憎んだりしてもいいのに、変わらずに大切にしてくれるの。
だから私、瑠生のためなら空だって飛べるよ。
「ねぇ、慎也、あなた、後悔していないの?瑠生を愛してたのに、私を選んで……。私が、引き裂いたのよ」
美衣はそう言って慎也を見つめた。慎也は、路肩に車を止めると美衣を見つめて微笑んだ。
「美衣を選んだのは、素直に美衣を愛しいと思ったからだ。後悔なんてしたこともないし、これからもしない。美衣を愛してるよ」
「慎也……」
二人は見つめ合い、ゆっくりと唇を重ねた。
だが、慎也は一度も言葉にしていないひそやかな思いがあった。それを《ジェラシー》と呼べばいいのかどうか、分からなかった。
どうして、瑠生より美衣を選んだのか。
そう…あの頃。
慎也は確かに瑠生を愛していた。
だけど、瑠生にはいつも匠がいた。
匠の存在が疎ましかった。
匠という存在が、自分の愛の形を疑問にする。
いつか、匠に奪われる。
そんな気がしたのだ。
だが美衣は違う。美衣は、瑠生と匠の関係が羨ましかった。自分をそんなふうに守ってくれる人を探していた美衣。その美衣が慎也を求めた。慎也は、美衣を愛しいと思った。今では美衣を誰よりも愛している。
これで、よかったんだ…。
*
匠は横須賀で遥を抱いていた。
遥は何も言わずに、優しく匠を抱きしめていた。
匠は、どうしたいの?
美衣の言葉が、脳裏に焼き付いて離れない。
俺は…どうしたい?
知るか。そんなの。
俺は……俺だ……!
みんなが、それぞれの愛の形に思いを寄せて、悩み、乗り越えて、真夏の夜を過ごしていった。
第2部 姉妹篇
完結
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