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男たちも思わぬ邪魔者に驚き声の方を振り返ると
「誰だお前。今取り込み中でなぁ…悪いことは言わねぇ…とっとと失せろや!」
邪魔されたことに苛つきながら近づく男に
「今すぐ娘さんを放しなさい。今ならなかったことにしてあげますから…ね?」
と怖気つく様子もなく静かに話すその邪魔者。その話し方に、はっと顔をあげるハルがその聞き覚えのある優しい声に
「源・・・さん?」
まさか…と思いながらも恐る恐る呼んでみると、源さんと呼ばれた男が
「はい。娘さん、お久しぶりですね」
とにこやかにハルに笑いかけた。
『この状況でどうしてそんなに涼しい顔で笑っていられるの?』
と源三郎の優しい笑顔に驚いたハルだが
「てめぇ…邪魔だっていってんだろうが!おっさん、命が惜しかったら失せな!」
と刀に手をかけながら男が近づくのを見て
『源さんは丸腰だから刀を持った男達に到底敵うはずがない』
ハルが焦り
「源さん、逃げてっ!」
と力いっぱい叫ぶが、源三郎は逃げるどころか余裕の表情でひょいっと落ちている棒を拾い上げると男達から目を外さずにゆっくりと構え男達を見据える。そして先程ハルに向けたのと変わらないにこやかな顔で
「大丈夫ですよ。剣には少々覚えがありますから。これでも天然理心流の門下生でしてね」
と静かに告げた。
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