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おれは静かに顔を出し、大きく息を吸った。
ふいに目の前に差し出された手。先輩か?
「あ、どーも…」
おれは躊躇いなくその手を取り、プールサイドに上がる。
見ると、先輩ではなかった。
「おまえ…」
「ずいぶん長い間、潜ってましたね。」
石川リョウだった。
「そんなに長くねえだろ。」
「いえ、5分は潜ってました。」
…数えてたのかよ。
なんなんだ、コイツ…
「潜るのは、自分も好きっす。」
「あ、そう。」
おれは近くにあった自分のタオルを手に取り、石川リョウの話を流して歩き始めた。
「水のなかは、静かだから。」
…同じ、考えかよ。
「孤独を思い知らされるけど、それが心地良かったり。」
…それも、同じ。
「先輩は、違いますか。」
………
あまりにもハッキリと、おれの考えと同じことを言う。
気味がワリィとも思ったが、同時に喜びと照れが大きく心を占領した。
そこで、共感の言葉を述べたりすりゃー会話も弾むんだろーが…
今のおれは、そんな気分にもなれなかった。
「んな事、考えた事もねえよ。おまえ、変なヤツだな。」
なんだか気に食わなかった。
ただそれだけで、自分の考え方も否定した。
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