視線

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その夜、おれは思い出していた。 石川リョウ。 アイツ、確か中学の時から見てたと言っていた。 おれは、からかって言った事かと思っていたが、ヤツも中学時代に水泳部に入っていたとしたら、別の学校にしろ、なにかの大会で会っていたのかもしれない。 聞いた事がねえ名前だったが、おれは興味のねえ事に頭を使わない人間だから、ただ覚えていないだけなのかもしれない。 おれは、中学時代、同じ部にいた友達に聞いてみた。 『石川リョウ?!知ってるも何も超有名だったじゃん!』 電話越しに驚いた声を出す友達。 有名? そんな凄いヤツなのか? 『俺らが3年のとき、大会で乱闘騒ぎがあった事、覚えてねーの?あのときの中心人物が、石川リョウだよ!』 聞けば、他中学の水泳部同士が、殴り合いをしたらしい。 そういえばそんな事が、あった気もする。 コトの発端となったのが、石川リョウだったという。 その後、石川リョウだけが停学処分を受け、他のヤツらは反省文だけで済んだらしい。 たしかその乱闘が始まったとき、おれの学校は記録を取っていたところで、おれも泳いでいた。 その大会で、おれは自己記録を更新し、優勝した。 乱闘? 馬鹿な事をするヤツもいたもんだな。 そう感じた事を、ふいに思い出した。
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