疑惑

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石川リョウは、平塚の顔をしばらく凝視した後、何も言わず去って行った。 「なっ、なんだよ、今の!失礼なヤツだなっ!」 「アイツちょっとオカシイんだよ。ほっとけ。」 むくれる平塚を宥めて、おれは先へ進んだ。 少し、ほっとした。 アイツが話してしまうんじゃないかと、ヒヤヒヤしたが、何も言わなかった。 しかしあの態度… やっぱりアイツは“あの事”を知っているのか…? 疑惑はますます深まる。 「てゆーか、何でアイツ、オレの名前知ってるんだ?」 そう。 同じ部で、同じ大会に出場したからおれの名前を知っていた。 それは理解できる。 だが、平塚の事も知っていたとなると… 「そりゃやっぱり間宮のストーカーだから、ナオの事も知ってるんじゃない?!」 ふざけた事をぬかす羽村を睨み、おれは歩き出した。 「間宮コワイ~!」 「おまえ楽しんでるだろ…」 羽村が平塚にくっつき、そんな羽村に平塚が突っ込む。 もうこのやり取りも見慣れた。 幸せなんだ。 平塚は。 今さら、その幸せをどうにかする気なら、おれは許す事はできない。 面倒な事になるのを避けたかったが、おれは決意した。 アイツと話をつけよう。
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