疑惑

8/9
前へ
/62ページ
次へ
「でもあの後、大した騒ぎにはならなかったようですね。」 平塚が、傷付くと思ったから… 気絶しちまって分からないと言うのなら、あれは酔っ払いの仕業だったと言うしか、なかった… 「それも間宮先輩が、何とかしたんすか。」 コイツ… よくもぬけぬけと… 「なんで…平塚なんだよ。」 おれは、すぐにでも殴りかかりたかったが、ここは部室。 いつ誰が来るか分からない。 堪える事にした。 けど、拳は震えていた。 「間宮先輩のせいです。」 「…はっ?!」 何、言ってんだ? 「先輩のせいで、平塚ナオを襲うハメになったんすよ。」 あまりに意外な話の流れで、握り締めていた拳がゆるむ。 「何ワケわかんねえ事言ってんだよ。おれのせいで平塚が、って、どんな関係があるんだよ!」 意味が分からねえ。 コイツは、そんなに人を怒らせたいのか? おちょくってんだとしたら、もう我慢はできねえ。 おれはもう一度、握りこぶしを作った。 しかし石川リョウの口から出た言葉で、また緩んだ。 「関係は大アリじゃないすか。好き合ってるんでしょ、二人は。」 …へ? 「ちょ、ちょっと待てよ。す、好き合って…って、ハア?」 おれは思わず苦笑。 だが石川リョウは、なおも表情を崩さない。 「それなら平塚ナオは、自分にとって邪魔な存在でしかないっすから。」
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1597人が本棚に入れています
本棚に追加