視線

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「自分、石川リョウっていーます。」 石川リョウ? 聞いた事がねえな。 「で、何か用かよ?」 「いえ、別に。」 はあ? 別に? 用がねえのに睨み付けて話し掛けてきやがったのか? ナメてんのか、コイツ。 「まだ水泳やってんすか。」 水泳? 何だ、入部希望か? そーいやコイツの体つき、水泳やってるって感じだな。 ん? 待てよ。 「なんでおまえ、おれが水泳やってんの知ってるんだ?」 確かにおれも、そーゆー体つきしてるけど。 同じのをやってるヤツには分かるのか。 「そりゃ中学んときから見てましたから。」 「あ、そう…」 何か、気持ちワリィ言い方。 ストーカーかよ。 「自分も水泳部入るんで、これからよろしくお願いしますね。」 結局、最後まで無表情で通したその男は、何をするでもなく去って行った。 お願いする態度かよ、あれが。 「なんか今の、告白みたいだったよね!」 「オロされてえか、羽村…」 平塚に泣いて縋る羽村を無視して思った。 石川リョウ。 やっぱり気に食わねえ。
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